<私はガン患者>『入院中の記録(一部)』
※【平成15年1月17日(木)】
…本日は、腹部エコー検査。結果は、
「多少、死亡肝があるが太っている割にはマシ」
 …だとか。十数年前に、アルコール性肝炎をやった割には随分と良い筈。噂のウコンが効いてる筈。
…CT検査を含めた検査結果は、
 @胃の病巣部が、膵臓へ癒着・浸潤が見られる。
 Aリンパ節への、遠隔転移が見られ無い。
 B胃の下方に転移らしきモノが見られるが、「普通の人にも見られる範疇」だと言う。
 C総合結果は、「開けてみてからの問題」…の一言。
…自宅に中間報告をすると、患者さんの母親から電話があったと言う。

※【平成15年7月18日(金)】
…本日は胃の透視検査。通常のバリウム検査だと言う。何故か、今日の検査は早く呼ばれて早く終わった。
…10時55分。女性患者Yさんから携帯電話にに連絡があり、今から見舞いに来ると言う。最近、来院を始めた30歳代前半の人だが、入院前の私の話に、
「お見舞いに行きます。絶対に行きます!!」
 …と言ってたが、冗談か愛想かと思っていたのが、健康茶を手土産に本当に見舞いに来た。13時から仕事があるらしく、12時20分には帰る。
…夕刻、Y医師から透視検査の結果も含めて、
「胃の病巣部と、膵臓の癒着・浸潤具合が何とも言えない。すべては開けてみてから。術後は抗がん剤投与と、膵臓全摘ならインシュリン投与の併用」
 …の話が出る。こう言う話を何度も聞かされると、気分的に随分と落ち込む。
…此処で、医師にとっては遣りにくい発言をした。
「ガン手術に於いて腹を開けた迄は良いが、『手遅れ状態で、手の施しようが無い!!』と、病巣部に手を付け無いまま閉じてじまったと言う話を聞くけど、手術担当の外科の先生にお願いしておいて下さい。仮に完全除去不能の状態でも、目で見える範疇の病巣部は可能な限り取り除いておくように…。もし、手遅れ状態と言う事で除去処置をしないまま閉じたのが解り、それが原因で早目に死んだら、化けて出ますよ!!」
 …と、一種の脅迫のようにお願いをした。私の迫力に、Y医師は気後れした様子で、
「ワ…解りました。伝えておきます…」
 …と、苦笑い。

※【平成15年7月19日(土)】
…必要な検査も一通り終り、土日は特別な用事が無いので、本日9時過ぎから21日消灯まで一時帰宅。20日&21日は貧血治療の増血剤注射の為、10時〜10時半迄の間に7病棟ナース・ステーションヘ来なければいけない。大病の割に、煩わしさを感じる。入院から昨日までの検査なら、午前中に一つ、午後から一つすれば半分の日数で終わったはず。何か勿体付けると言うか…御役所仕事と言うか…。だから、時間を持て余すのだ!!
…自宅に居た14時過ぎ、患者K君が来院。治療をしないまま、
「他人(患者)の事どころか!!そこまで自分の病状が悪いのに何故、即、入院をしなかった!!何故、他人の心配ばかりする!!ワシだったら即、入院するがノ〜!!」
 …と、散々怒りながら1時間ほど、自分の胃に潰瘍で穴が空いた時の話をして帰る。
…私の胃ガンに諦め切れない女房が、私の入院以来、慣れないインター・ネットで「抗癌作用がある」と言われているアラビノキシランと言う健食(健康食品)を探し当て、私に勧めた。駄目元で試してみる事にした。開発者がエジプト系アメリカ人。そちらから輸入している代理店から買うと、例の如く異常に高い。含有量が少ないが国産の分もあると言うので、国産を試してみる事にして、本日から始める。結果が良ければ、アメリカに居る姉に頼んで日本の代理店を通さずに直接、送らせる事にする。
…15時半過ぎにI外科医院へ行き、交通事故患者のO君に手作りの事故処理用紙を渡し、損保会社相手の処理方法を教える。17過ぎにK病院に入院している患者Yさんを尋ねた後、入院生活に足りないものを105円ショップ(笑)で買い揃える。
…思い立って、16時前に西条市のG寺へ向かう。16時半頃に寺に着いたが、事務所には誰も居ない。受付前のベンチに座っていると、院代さんが法事姿で帰ってきた。1年振りに会って、挨拶しがてら話を始めた。
「少し、痩せたんかな?」
「そうです。今、入院中なんで…」
「エ〜ッ!!…で、病名は?」
「手遅れ状態の、いわゆる末期ガン状態…」
 …言葉を詰まらせた院代さんの顔から笑顔が消え、視線が下を向いた。
「…手遅れ状態…末期状態…のガン。…場所は?」
「平均的日本人に多い胃ガン。本来なら菩提寺の新居浜のR寺へ行く筈が、何故か此方へお邪魔んですよ…」
 …暫くの重い沈黙の後、時間を気にしながら院代さんが言った。
「帰りは急ぐ?」
「今日から二日ほど外泊だから、急がないです」
「じゃあ17時を過ぎると、お勤めがあるから…」
 …と、[一代守り]を持って来て、
「加持祈祷させるから、持って帰り…」
「今日は、そんなつもりじゃ無かったから、持ち合わせが…」
「我々は…盟友じゃないか」
 …と、言った。理由は、当家の菩提寺である高野山真言宗R寺と、石鎚山真言宗総本山G寺は姻戚関係である。私は、菩提寺R寺住職に頼んで高野山真言宗で得度出家している。数年前から仕事の関係で、G寺と付き合いが始まったから。今後、この御守を大事にしておかねば。
 …加持祈祷後の一代守を受け取り、手持ちが無いと言うが小銭があったので、院代さんに断って賽銭箱にソックリ入れて帰る。別れ際、院代さんが言った。
「病気には、絶対に負けない事!!退院したら、絶対に元気な顔を見せる事!!約束やで!!」
 …と。その言葉に、涙を隠すのに困った。

※【平成15年7月20日(日)】
…午前中に病院へ行って増血剤の注射を受け、後は大型バッグ探し。
…13時に超大型スーパーへ行き、患者Yさんに頼んでいた物を受け取り話をしていると、自宅から携帯に連絡が入り、患者M君から電話だと言う。Yさんと別れ、自宅からM君に連絡を取ると、
「夕方に連絡します」
 …と言うものの、彼の事だから解らない。
…大型バッグは自宅近くの店で格安のを買い、帰宅後、軽く拭いて乾かせておく。再び超大型スーパーへ行き、映画の切符を買い、20時には息子を連れて見に行くが、貧血が原因のパニック症状が出て困った。しかし、大病で入院中に度々外出や外泊をし、車で走り回るわ映画を見に行くでは…何と言うか…です。
…M君からは、結局、連絡無し。

※【平成15年7月21日(月)】
…午前中、患者Iさんから様子伺いの電話。M君が治療に来る。治療中、患者Yさんから電話が入り、17時〜18時の間に治療に来ると言う。
…17時過ぎにYさんが来て治療を受けに来た。治療後、再度買い物に出掛け、飲み物とテレホン・カードを買う。
…20時に息子を塾へ送って行き、シャワーを浴びて帰院準備。21時半の消灯時間間際に帰着。病院のボイラーが早く止まるから、クーラーが止まって暑さと寝苦しさで困った。

※【平成15年7月22日(火)】
…7時より、24時間の採尿が始まる。
…10時過ぎのY看護師が来て、
「長時間点滴用注射針を留置する為の処置をするそうです」
 …と言うなり、突然状態で小手術の準備が始まる。その為にパニック症状が酷く成り、昨夜に家を出る時に女房に鍼をして貰った左肩甲骨内側のコリが一気に悪化。手術室で少々、パニくる。外科の担当はK医師。小手術(15分程度)が始まる直前、私の身体を触って、
「骨が太い!!太い骨をしているな〜!!」
 …と、呆れたような声を上げる。仕事の事が気に成るから手術日を聞くと、
「患部が腫れているから、8月の最初に成りそう…」
 …と言う。理由を聞くと、
「腫れてる所を縫っても、裂ける可能性が…」
 …と言いながら、処置室からバタバタ出て行った。余程、忙しいのか…?
…11時から、7病棟から3病棟への大移動が始まる。7病棟担当チームの若い看護師二人が手伝ってくれたのだが、話しかけても何故か二人とも悲しそうな笑顔のみ…。私の病状から言えば、当然かも知れない。
…3病棟では部屋と担当看護師が決まっており、T担当看護師が挨拶に来た。7病棟担当のY看護師がスケベ親父の私好みのタイプだったから、T看護師は性格は良いが少々(御免!!)…と言うのは可愛そうか(笑)。小手術の時に、食事や水分の制限があるような事を言ってたが、12時に食事が出た。
…13時過ぎ、M君から見舞い電話。
…14時過ぎ、女房から電話。前開きのパジャマを頼む。
…15時過ぎ、婆さんが来る。
…16時、T看護師がK医師の伝言を伝えに来た。
 「25日朝から絶食。薬と水分はOK。28日に腹部レントゲンと採血があります」
  …と。
…尚、この日より事情があって、記録は手書き。

※【平成15年7月23日(水)】
…10時〜12時半まで点滴。
…12時10分頃、Wオバサンの見舞い。
…13時より、余りの暇さに急遽帰宅。
 自宅治療室でゴソゴソしていた14時頃、以前、娘の後輩で宇摩郡土居町(現・四国中央市)から治療に来ていた公立N高女子弓道部員のO嬢から電話が入った。
「明日、行きたいんですが」
 …というが、私は入院中。今日は、偶然にも帰宅していただけなので、
「事情があって明日は居無いので、できたら今からおいで」
 …と、来院させる。15時前に、治療の為に弓道部の後輩女子部員を連れて来た。
「今、私は入院中で、たまたま帰宅したばかりだったので、悪いが今日、来て貰った」
 …と、事情説明しながら治療を済ませる。その後、
「退院したら連絡するか、治療室玄関を開けて治療再開を解り易くしておく」
 …と伝え、18時40分には病院へ戻る。
…20時半にはクーラーが止まる。何とか成らないか〜!!

※【平成15年7月24日(木)】
…本日の予定は、午前中5時間の点滴一本と輸血。明日より、絶食と24時間の点滴。午後から、一時帰宅。しかしK医師はY医師に比べて、余り細かく説明に来ない。余程、大丈夫…なのか、駄目…なのかである。
…午前中、点滴をしながら暇を持て余して5病棟の親父の部屋へ行ったが、早々に切り上げて13時〜19時まで帰宅。この外出や外泊の度に届出を出す規則なのだが、何せ時間を持て余して退屈している。届出の時、
「病院前バス停に辿り着く前に、暑さで病院駐車場のど真ん中で泡を吹いて白目を剥いて大の字に成って寝ているかも知れん。場合に寄っては痙攣を起こしているかも知れんから、帰りが遅かったら救急車を回すか、ストレッチャーで迎えに来て下さい」
 …と、馬鹿話で看護師達をからかっていると、傍に居たK医師は心配そうな複雑な表情で私の顔を見ていたのが印象的だった。そのうち思い余ったK医師は、
「余り無理をしないで、手術の為の体力温存も考えてください!!」
 …と言った程だから、私の場合、他の患者に比べて医学知識も自分の身体状況も観察する能力もある筈だから、随分と遣り難い患者であった筈。言い換えれば、中年不良患者かも知れない。ガッハッハ〜!!

※【平成15年7月25日(金)】
…本日より、24時間点滴と絶食のセット。
…絶食が始まったにも拘らず、配膳車が来ると食事を配っている看護師の傍へ行き、
「私のメシは有るンかいノ〜?」
「アレッ、絶食は明日から?」
「今日から…」
 …と言うと、笑いながら起こったフリをしていた。忙しいのに、気の毒〜。
…ただ困ったのが、食事時は部屋中に食べ物の匂いが立ち込める。点滴をしている関係で食欲自体は少ないのだが、匂いと点滴と食欲とは別物。匂いが非常に気に成る。堪らず、食事時間中はベランダへ緊急避難。
…点滴は今迄のと違い、大きな袋に黄色の薬剤が入っている。200tの白濁した栄養剤も同時に入れる。途中、2回目の400t輸血の追加。
…12時過ぎ、高齢Sさんの見舞い。一昨日の16時にも来てくれたらしいが、あいにく外出中。入院前に実家にも来てくれたのに、気の毒でした。
…13時、小中学校時代の同級生H君の母親が2病棟に入院していたらしく、本日めでたく退院と言う。使いかけのテレビ・カードを置いていく。
…14時半、婆さんが来る。今日、新居浜名物(?)の花火大会。陽が暮れて、花火大会の為に女房が息子を連れてきた。娘と親父以外で、他の患者達と5病棟ベランダから高見の見物。
…19日から国産アラビノキシランを飲み始め、2日目より胃周辺の病変に因る腹部違和感や胸椎10番前後の鈍痛様疼痛が薄れ始め、昨日よりほぼ完全に消失している。

                                  <以後、次回へ>



[36] (2006/06/25(Sun) 03:07:08)

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