Archive for 10 月 3rd, 2018

何と表現して良いのか

息子が大学進学した年だから平成18年の話である。

息子が国立大学に入り、娘の時と同じく住環境や諸々を観察する為に父兄参観を(笑)。
今回は婆さんも連れて行く事に成り三人で特急電車で松山へ。珍しく電車は込んでいたが、我々はボックス席に座れた。途中、西条駅で婆チャン・娘・孫の三人連れが乗り込んできたがボックス席が無い。三人連れ婆チャンは通路を挟んで私の隣に、三人連れ娘は幼い孫を抱いて私の少し前の席に背中を向けて座った。当然、孫は私と向かい合わせと成る。
私と言えばウオークマンで綾小路きみまろの漫談を聞きながらビールを飲み、愛妻と我が婆の機嫌を取っていると女房が言った。「お父さん、今日はどうしたの。何時にもなく良い笑顔で」と聞く。「きみまろの新しいレンタルCDを入れたんで聞いてる」と言うと笑いながら黙っていた。その間も、向かい合わせの孫にチョッカイを掛けていたが反応が悪い。孫は能面の如く無表情でお菓子を食べている。やがて今治に到着すると、多くの乗客が立ち上がり三人組も立ち上がった。若いお婆チャンは私に会釈をした途端、孫が大泣きを始めた。驚く母親に、お婆チャンが事情を話し、母親が我々の座ってる窓の外を通り掛かった時、やはり笑いながら会釈。女房曰く、「お父さん、知らない子を泣かせてはいけないでしょう(笑)」「泣かせて無いぜ。事情を知ってるお婆チャンなんか、隣でずっと笑ってたし驚く娘に訳を話してた位だから」って、この話は終わり。

もっと凄い話がある。松山駅で降りたは良いが、シャトル・バスの連絡が悪い。「お父さん、タクシーで行こうか?」って話を振って来たが、「チョット待ち」と言いつつ、バスの料金を調べタクシー料金と比べると、タクシー料金は大人3人分のバス料金の倍以上。「フェリーは予約してるし急ぎ旅じゃないからバスで間に合う」で話は決まった。
一時間近く時間があるがバス停先頭で順番取りをして、三人が周囲をジックリ見ていた。だってこんな風景、こんな時じゃ無いとジックリ見れないし、身内が三人一緒だから時間つぶしが出来る。すると、100m程先に松山駅前電停があるのだが、そこで見事と言うか不思議な光景が始まった。
電停の木製ベンチの下には年老いたホームレス(路上生活者)が二人程 寝ていた。私達の立ってる場所の弩真ん前である。まだまだ普通の生活時間帯だから周囲も街灯で明るい。電停には道後温泉方面行の電車が止まり時間待ちをしている。そこへ、ベンチ下で寝ていたホームレスの婆サンが停まってる電車の後ろを通り電車の中程辺りまで行くと、もう片側の線路を跨ぎモンペとパンツを下すと座り込み、オシッコをし、ティッシュペーパーで前を拭くと、ペーパーをその辺りに捨て、ベンチに戻ると下に潜り込み、毛布を被り寝てしまった。少しビックリしたのは、水銀灯で明るいとは言え夜である。位置的に婆サンを横から見てるんだが、放尿されてるオシッコガ見えたんですね(笑)。
そんな風景を見ている内にフト気になり後ろを振り返ると、スーツ姿にビジネスバッグの身なりの良い方々が、御互いが邪魔に成らないように並び、複雑な面持ちで事の成り行きを静観していたのだ。
考えてみると、婆サンがベンチ下から出て電車の後ろを横切ったと言う事は、電停ベンチから放尿現場が見えないように電車を盾に使ったのだろうが、我々が立っている駅前バス停から放尿現場までザッと100m。まだまだ明るい時間帯だから全ては丸見え。私達三人ばかりか、平均的には同じ方向を向いてバス待ちをしていた方々は時間を持て余し気味だっただけに、年寄りとは言え「女性の生の放尿シーン」と言う見ては成らないモノを目撃した罪悪感と、滅多に見られない光景に、言い知れぬ感覚が沸き起こっていたのか、バツの悪そうな顔でお互いの顔を見て苦笑いしてました。

我が子供達が幼い時、テレビアニメ「名探偵 コナン」を観ていて思わず言った言葉、「主役グループ、毎回よくぞ都合よく事件が起こるもんだ」と言った事があるが、「我々は出掛ける度に事件じゃなく、色々な出来事を目撃するもんだ」と感心した次第(笑)。