【近藤鍼灸院の健康新聞】「理解されてるようで、されてない鍼灸治療」

まだ最初の病院勤務をしていた頃、朝出勤すると掃除中の鍼灸治療室で誰かが寝ている。顔を見ると、私を毛嫌いしているオヤジ。掃除をしている助手に聞くと、「歯が疼くと、朝早くから玄関先で待ってた」と言う。この治療室には外科医の会長の他に、私とオッサンと小娘の三人の鍼灸師が居た。そしてオヤジ患者は小娘の大ファンで、「若い綺麗な姉ちゃんに触って貰っただけで、病気は治った気がする」と言うスケベオヤジ(笑)。
本日は、オッサン&小娘は学会出張で居ない。外科医は何時来るとも解らんから、本日アテに出来るのは私一人である。だが、オヤジ患者があからさまに私を毛嫌いして口も利かないんだから、受付して「お願いします」と言わない限り治療はしない。掃除の邪魔になるから、助手達も帰って欲しいが言う事を聞かない。三人の助手はオヤジ患者の症状は私しか治療できないのを知ってるから、とうとう一人の助手が「お願いしますって言ってるから、何とかして下さい」と言い出したから、「どれや‼此れか‼」と患者の側に行き、「どの歯が痛い」「右上」「右手出して‼」と言う成り右合谷へ切皮。その途端、「アレッ、あれだけ痛かった歯痛が止まった‼」「まだ、根っ子の方が脹れたような重怠さがあるだろう‼」と言うと、始めて「先生、何で手に鍼しただけで解る?」「平均的な知識だよ」と言いつつ、足にもう一本鍼を刺し、鍼麻酔方式で治療を済ませたが、その間に、「鍼治療って、こんなに効くんじゃ~‼」と言ったから、「今迄、どんな治療を受けよった‼」と聞き返したが、返事は無かった。

治療後、「さっきより痛みは楽に成ってる筈じゃが、それは歯科医院で治療して貰わんと駄目‼ 時間が経ったら痛みも少々後戻りするから、今日中に歯医者へ行っといた方が良い」「この痛みは何?」「一般的には虫歯。専門的には齲歯で、今回は歯根膜炎か歯髄炎もやってる筈だから、絶対に歯医者へ行っとくように」と言って帰したんだが、2~3日して又来ると、「また痛みが出た」と言うから、「歯医者は?」と言うと「行って無い」と言う。

「今日は歯医者へ行っておくように」言って帰すと、夕方近くに成って歯科医院の薬服を持って鍼灸治療室へ来るて、「あの歯医者、先生と同じ事を言よった」とビックリしてるが、話の順番が逆(笑)。たまたま私には部分、他の医師や鍼灸師より歯科の臨床面における知識が少しだけ余分にあったので、たまたま患者の病状が私の知識と合致しただけの話。だから、歯医者の先生がもっと難しい事を喋れば、私は太刀打ちは出来ない。当然だが(笑)。

それと、現在地で独立してどの位経ったか、冬の18時過ぎ辺りは真っ暗。当院は遅くまで受付していたから、まだ明けている。もう誰も来ないから閉めようと思ったところ、誰かが入ってきた雰囲気がある。覗くと、うら若き女性が座っている。「歯科ですか、鍼灸ですか」と聞くと、歯科だと言う。「歯科は診療が終わったから・・・先生が居るかどうか様子を見てくるね」と言って裏へ回り事情を話すと「見るから入って貰いなさい」と言う。待合室に行き治療可能を伝えると喜んでいたが元気が無い。「歯が痛い?」痛いと言うから「鍼だけど、痛み止めてあげようか」と言うと、お願いします。合谷に刺し暫くすると痛みが取れたと言う。その後、歯科治療も済み帰った。

歯科の方は其れからどうしたかは知らないが、その女性の弟が来て、「姉が、あそこの鍼は効くと言って感心してました」と言う。そして、歯科治療と相まって歯が疼く事は無くなったと言う。

 

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